『うたの動物記』小池光

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動物園で触れたことはある。テレビで見たことはある。音楽で聴いたことはある。でも、短歌の中で動物に触れたことはありますか?

本書の「うた」とは「短歌」のことです。

短歌とは日本古来から続く詩歌の形式で、五七五七七の計三十一音で一首をなします。

『うたの動物記』は第60回日本エッセイストクラブ賞を受賞した一冊ですが、著者の本業は歌人です。当然短歌の業績は数々ありますが、短歌にとどまらず彼の書くエッセイが特に面白くぐいぐい読まされます。

本書は、動物や生物の詠まれた数多くの短歌を取り上げながら、動物と短歌との邂逅がたいへん魅力的であります。

登場する動物は「馬」から始まります。

(略)馬にまつわる成語の類にはどうもぱっとしないものが多い。馬耳東風、馬の耳に念仏、馬齢を重ねる・・・・・・どうも馬を馬鹿にしている。

税務署へ届けに行かむ道すがら馬に逢ひたりああ馬のかほ  斎藤茂吉
黄海もわたりゆきたるおびただしき陣亡じんぼうの馬をおもふことあり  同

ここでは、斎藤茂吉の短歌が二首取り上げられています。同じ作者でも二首並べられるとその短歌の対比が楽しめるようになっていますね。

そして最後に取り上げられる動物は「猫」。著者は大の猫好きであり、著者自身の作品が引かれています。

肛門を最後にめて眼を閉づる猫の生活をわれは愛する  小池光
かゆいとこありまひえんかと言ひながら猫の頭を撫でてをりたり  同
ねこじやらしに強く反応せしころのきみを思へり十年が過ぐ  同

作品の選択のみならず、これら短歌作品を交えた文章が非常に味わい深いのです。広く深い知識から繰り出される文章は、決して難しくなく、読む者の心をくすぐります。

あとがきに「動物は詩歌の友である」とある通り、詩歌を彩るものとして「動物」に焦点を当てた本書は、動物好きにも短歌好きにもどちらにも新たな発見に満ちた一冊といえるでしょう。

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