一般に「読書術」や「読書法」と呼ばれる、読書に関する方法または技術はさまざまありますよね。
速読、超速読、瞬読、熟読、精読、深読、味読、耽読、遅読、多読、乱読・濫読、黙読、音読、朗読、素読、通読、輪読、査読、視読、積読などなど。
この記事ではこれら多くの種類がある読書法や読書術の意味合いや違いをできるだけ簡潔にわかりやすく明確にしていきたいと思います。またそれぞれの方法や技術における関連書籍も併せて取り上げます。(登場する著者名は敬称略で記載)
まず全体像をつかむために、それぞれの読書法・読書術の関連イメージ図を以下に示します。下図は速度と量を同軸に表していますので、場合によっては必ずしも当てはまらないケースもありますが、おおまかな位置づけは把握できるようになっています。この図を参考に、それぞれの方法の違いを御覧ください。
速読(速読術)
速読とは
本を短時間で読むことができれば、決まった時間内でより多くの情報を取り入れることができるため、速読を身につけたいと考えたことのある人は多いのではないでしょうか。そもそも速読とはどのような方法や技術なのでしょうか。まずは辞書等における定義を見てみましょう。
・文章を速く読むための技術であり、時には読書法も含まれる場合もある。読書速度を向上させ、効率的に大量の書物を読破する技術である。(Wikipedia)
・本などの文章を普通より速く読むこと。(大辞林第三版)
・本などを普通よりも速く読むこと。(デジタル大辞泉)
・本などを、ふつうよりもはやく読むこと。(精選版 日本国語大辞典)
速読(または速読術)というのは読んで字のごとくだけど、「速く読む」方法や技術のことを指すんだね。
速く読むには、具体的にどんな方法があるの?
速く読む方法や技術をまとめて「速読」と呼んでいますが、その内容はさまざまで多岐にわたります。本記事ではあまたある読書法・読書術の違いを明確にすることが目的であるため、実践的な詳しい方法はそれぞれの書籍に譲るとして、ここでは大きな括りで速読というものを考えてみたいと思います。
速読の方法はさまざまありますが、共通するのは(一冊の本を)短時間で読み終えること。これが速読の条件であるといっていいでしょう。短時間で読み終える方法として、大きく分けると次の二つのパターンに分かれるでしょう。
- 【1】眼球や視線の動きを高速化することによって、短時間で読み終える方法
- 【2】本の内容を読み飛ばすことによって、結果的に短時間で読み終える方法
それでは【1】と【2】についてもう少し詳しく見ていきましょう。
【1】眼球や視線の動きの高速化による速読
速読と聞いてまず思い浮かぶのがこちらの方法ではないでしょうか。眼球や視線の動きの高速化、また視野を拡大することで一度に読める文字数を増やすなど、物理的な鍛錬をすることで読む速度を向上させる方法です。1分間に何千字、何万字読めるようになりました、といった記事を目にすることも多いですが、訓練次第で読む速度は向上します。ただしどこまで速く読めるようになるかは個人差があるでしょう。
速くっていうけど、一般的にどの程度が速いレベルなんだろうね?
速読や記憶術の教育を専門に行っている「SP速読学院」のサイトによると、日本人平均値について次のように記載されています。
日本人の3人に2人は、読書スピードは400文字~800文字/分の範囲にあることが分かっています。平均読書スピードは毎分600文字で、文庫本1ページの平均文字数が約600文字(古い文庫本には800文字ほどのものもあります)ですから、1分間に1ページを読んでいる、というスピードになります。
毎分600文字が平均であれば、1秒間に10文字という換算になります。1分間に1ページですから、240ページの本であれば1冊読み終えるのに約4時間かかる計算です。
もともと1分間にどれくらいの文字数を読めるかは人によって違いますし、毎分何文字以上読めれば速いというのは一概にはいえないでしょう。ですから仮に元々の速度の2倍以上の速さで読めれば、速読が身についたといってもいいと思いますし、おそらく本人も1冊4時間かかっていた本が2時間で読み終えることができるようになれば、速く読めるようになったと実感することができるのではないでしょうか。
読む速度は個人差があるから、一概に毎分何文字以上が速いとはいえないね。だから個人個人が訓練の結果、もともとの速度より速く読めるようになれば「速読できるようになった」といってもいいんじゃないかな。
【2】本の内容を取捨選択し効率よく情報を得る速読
かつて速読に関する方法といえば、【1】の眼球や視線の動きの高速化によるスピードアップが主流だったのですが、最近はここで述べる【2】のいかに必要な情報を効率よく吸収するかという点がより重要視され見直されてきています。
佐藤優『読書の技法』から【2】に関する記述を引いてみましょう。
速読の第一の目的は、読まなくてもよい本をはじき出すことである。
速読を「普通の速読」と「超速読」に分けている。
「普通の速読」とは、400ページ程度の一般書や学術書を30分程度で読む技法である。
「超速読」は、前述の書籍を5分程度で読む技法で、試し読みと言ってもよい。
(※超速読については後述)
佐藤優が「普通の速読」と呼んでいるものは、眼球の動きや視野拡大による速度向上など物理的なスピードアップではなく、取捨選択にあることがポイントです。物理的な速度向上の結果400ページの本を30分で読むことができる人は世界中を探せばいるでしょうが、それはごく一部の限られた人たちだけができることです。
佐藤優が述べているのは、誰でも実践できる方法としての速読です。つまり400ページの本を30分程度で読むといっていますが、最初から最後まで一字一句漏らさず読むということではありません。新聞の読み方の応用であるといい、次のように書いています。
ざっと見出しを見て当たりをつけ、どれを読んでどれを読まないかを判断する。そのうえで、既存の情報は適度に飛ばし、必要な未知の情報だけを拾い読みする。その原理を読書にも応用するのだ。
どの部分を読んでどの部分を読まないかを取捨選択しながら、自分にとって大切な部分を読んでいく方法も速読といえるんだね。
取捨選択の精度を上げるには、何冊も読んで実践しながら慣れていくしかなさそうね。
速読のまとめ
速読をまとめると、次のようになります。
- 速読とは、速く読む読書法・読書術である。
- 速読は大きく分けて二つのパターンがある。一つは眼球や視線の高速化、視野の拡大など物理的な技術訓練により速度を高めて読む方法、もう一つは必要な情報を取捨選択し結果的に短時間で読み終える方法。
速読に関する書籍
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超速読とは
「速読」を超える「超速読」という言葉を目にすることがあります。「超速読」と銘打った本がいくつか見られますが、その多くは速読を強調する意味合いで「超」をつけている場合が多いです。
超速読は速読とは違うものなの?
ここでは前章で触れた「速読」とは違う意味合いで「超速読」を用いている例として、さきほどに引き続き佐藤優『読書の技法』における定義を取り上げてみましょう。
まず準備するのは、本とシャーペン(鉛筆でも可)とポストイットである。
それから、最初のころは横に時計を置き、一冊を超速読するのに5分以上かけないと固く心に誓う。
まず序文の最初1ページと目次を読み、それ以外はひたすらページをめくる。
このとき文字を読まない。とにかくページ全体を見るのだ。(中略)
そして、結論部のいちばん最後のページを読む。
これで本全体の印象をつかむと同時に、その本で自分が読むべき箇所の当たりをつけることができる。
佐藤優が述べる超速読のポイントは、5分の制約を設けることです。そして最初と最後、目次以外はひたすらページをめくることが重要なのです。シャーペン、ポストイットを用意するのは気になる箇所をチェックするためです。
たった5分間の読書では、得られる情報は限られるんじゃないの?
確かに5分間ですべての情報を得ることは難しいね。でもその5分間ですべての情報を得るのではなくて、次のような目的のために実践しているんだよ。
超速読はいわば試し読みであり、佐藤優は本を次の4つの範疇(カテゴリー)に区分するために超速読を実践しているのです。
① 熟読する必要があるもの
② 普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
③ 普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するには及ばないもの
④ 超速読にとどめるもの
前章で述べた「普通の速読」が30分程度なのに対し、超速読は5分です。1冊を5分で隅から隅まで読める人はごく一部の限られた人であるため、ここで述べているのはやはり情報の取捨選択なのです。速読における取捨選択はどの部分が重要であるのかを判断しているのに対し、超速読はその本自体をじっくり読むかどうかを判断する方法といっていいでしょう。
超速読のまとめ
超速読をまとめると、次のようになります。
- 超速読とは、5分間で最初と最後、目次を読み、それ以外はひたすらページをめくる読書法・読書術である。
- 超速読の目的は、その本をじっくり読むかどうか(速読や熟読の対象にすべきかどうか)の判断を行うためにするもの。
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瞬読
瞬読とは
「瞬読」と呼ばれる読書術が注目を浴びています。
一般社団法人瞬読協会が提唱する新しい読書術で、関連する書籍が2冊出版されています。1冊目に発行された書籍『瞬読』の帯には「1冊3分で読めて、99%忘れない読書術」と書かれています。
1年間のトレーニングで1冊3分で読めるようになった人が92%と紹介されており、中には分速36万字という信じられない数値を達成した人もいるようです。
瞬読の大きなポイントは、これまでの速読の方法の延長線上にある読書術ではないということでしょう。
つまり速読【1】で述べたような眼球を速く動かすという訓練は必要ありません。また速読【2】で述べた情報の取捨選択というものとも少し異なります。読み終えた後に内容を書き出すことができるという点も瞬読のポイントであり、この点からも読み飛ばした箇所がないということを示しています。
瞬読と速読は別のものと考えた方がいいね。
瞬読が身につけばいいことずくめだけど、本当にそんなことができるのかな?
瞬読の秘密は何なのでしょうか。一般社団法人瞬読協会の代表理事である山中恵美子の著書『瞬読』から、関連する記述をピックアップしてみましょう。
瞬読では、「音読」を”厳禁”としています。
瞬読のときに使う脳の部位と、音読のときに使う脳の部位は異なります。
瞬読とは、”眼球の動き”に頼る速読とは、まったく次元が異なります。右脳を使うことで、潜在意識に働きかける。それが瞬読の真髄です。
ポイントは「右脳」「潜在意識」です。
本を読むとき、一字一句音読しながら読んでいるケースも一般的には多いでしょう。実際は声に出して読んでいるわけではないのですが、音読しながらの読書では音読のスピードとなり、速く読むことができません。なぜなら音読の速度には限界があるからです。この読み方は左脳偏重の読み方といえるでしょう。
一方、瞬読は右脳を使う読み方です。眼球の高速な動きも必要ありません。言語を順を追って読むのではなく、ページに書かれていることを視覚的に捉える読み方といえます。
瞬読をマスターする流れとして、4ステップが提示されています。
- 変換力を鍛える
- イメージ力を鍛える
- 本を右脳読み
- 本の内容をアウトプット
関連書籍にはこれらに関する訓練の方法として、バラバラに配置された文字を既知の情報に読み替えるものや、書かれた内容を瞬間的に読み取り情景を浮かべるものが紹介されています。
1冊目の『瞬読』では本の中に記載されたものを見ながらトレーニングするようになっていますが、2冊目として発行された『瞬読ドリル』にはDVDが付属しており、こちらは実際の映像でトレーニングを実践することができるようになっています。
瞬読のまとめ
瞬読をまとめると、次のようになります。
- 瞬読とは、右脳や潜在意識を活用した読書法・読書術である。
- 本に書かれていることを一字一句読むのではなく、視覚的に捉える方法。
瞬読に関する書籍
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熟読とは
熟読とは何か、まずは辞書等の定義を見てみましょう。
・文章をよく味わいながら読むこと。十分に内容を読み取ること。(大辞林第三版)
・文章の意味をよく考えながらじっくり読むこと。(デジタル大辞泉)
・文章の意味を考えてよく読むこと。(精選版 日本国語大辞典)
熟読とは、文章やその意味をよく味わい考えながら読むことなんだね。
どの程度考えれば、じっくりといえるのかな?
ここで再び佐藤優『読書の技法』に登場願いましょう。熟読について次のように述べています。
熟読法の要諦は、同じ本を3回読むことである。
基本書は、最低3回読む。第1回目は線を引きながらの通読、第2回目はノートに重要箇所の抜き書き、そして最後に再度通読する。
第1回目の通読を漫然と行ってはならない。実はいい加減な仮読みのような手法で一度本を読んでしまうと、その後、重要事項がきちんと頭に入らなくなってしまう。
同じ本を最低3回読むことを熟読の重要なポイントとしています。しかもただ3回同じように読むのではなく、1回目、2回目、3回目と読み方が異なっているのも大切なところです。
熟読の技法としては大きく6つに分け、紹介しています。
【熟読の技法1】まず本の真ん中くらいのページを読んでみる<第一読>
【熟読の技法2】シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する<第一読>
【熟読の技法3】シャーペンで印をつけながら読む<第一読>
【熟読の技法4】本に囲みを作る<第ニ読>
【熟読の技法5】囲みの部分をノートに写す<第ニ読>
【熟読の技法6】結論部分を3回読み、もう一度通読する<第三読>
1回でじっくり読むのではなく、3回かけてじっくり読むのね。
熟読の定義はさまざまだろうから、1回読むだけで熟読といえる場合もあると思うよ。ただ佐藤優の上の方法はよりじっくり考えて読める方法であるし、熟読のひとつの形式であるといえるかもしれないね。
熟読のまとめ
熟読をまとめると、次のようになります。
- 熟読とは、文章やその意味をよく味わい考えながら読み、内容を十分読み取ることである。
- 1回ですべてを得ようとせず、数回に分けてじっくり味わう方法も重要な熟読法である。
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精読とは
精読とは何か、まずは辞書等の定義を見てみましょう。
・内容を細かく吟味しつつ、丁寧に読むこと。熟読。(大辞林第三版)
・細かいところまで、ていねいに読むこと。熟読。(デジタル大辞泉)
・丁寧に読むこと。(Wiktionary)
精読は熟読と述べている辞書もあることから、熟読にかなり近いものと考えていいでしょう。ただし、熟読の定義と比較してみたときの違いは「細かく」と「丁寧に」という部分です。
熟読が「じっくり」と書かれていたのに対して、精読は「丁寧に」読むことがポイントとなります。
精読というのは、細かいところまで丁寧に漏らさず読むことなんだね。
精査、精密、精検、精度、精細など「精」のつく熟語を考えてみれば、精読という読み方の丁寧さが明らかになるわね。
基本的には、前章で述べた熟読とほとんど近いものと考えていいかもしれないね。
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深読とは
深読とはどのような読書術なのでしょうか。
「ふかよみ」ではなく「しんどく」です。精神科医・脳科学者である樺沢紫苑が提唱する読書術です。
「プレジデント ウーマン 2016年9月号」より、深読に関する記述を取り上げてみましょう。(出典元:https://president.jp/articles/-/18681)
本から学びや気づきを得て、自分の成長の糧にする読み方のことです。
しかし、時間をかけてじっくり本を読むこと=「深読」ではありません。内容を記憶し、人と議論できるくらいまで理解して、自分の生活に生かす。
読書も同じで、読んで満足するだけでは意味がありません。記憶に残る「深読」をし、本から得た知恵を活用し、現状を好転させるのが理想です。
樺沢紫苑は、深読のために行うことは3つあると述べています。
1つ目は「本選び」。自分と相性のいい本をいかに選ぶかを意識します。2つ目は「読み方」。インプットの方法を工夫して効率をあげます。そして3つ目。記憶の補強につながる「アウトプット」を実行します。この3つがそろって初めて、自分の血肉になる読書が可能になるのです。
本選び、読み方、アウトプットの3つがそろうことで、身になる読書となるんだね。
読んだことを忘れないようにして現状に活かす読書が深読なのね。
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味読
味読とは
味読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・内容を味わいながら丁寧に読むこと。熟読。(大辞林第三版)
・内容や文章をよく味わいながら読むこと。(デジタル大辞泉)
・書物や文章を、内容や情味をよく味わって、じっくり読むこと。(精選版 日本国語大辞典)
味読とはその字の通り、内容をじっくり味わいながら読むことなんだね。
そういう意味では「熟読」や「精読」に近いものがあるわね。ただ「味読」の方が字面から、心から楽しんで堪能しているような印象を受けるわ。
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耽読とは
耽読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・書物を夢中になって読むこと。読みふけること。(大辞林第三版)
・読みふけること。夢中になって読むこと。(デジタル大辞泉)
・読みふけること。夢中になって本を読むこと。(精選版 日本国語大辞典)
耽読は、夢中になって読みふけることを指すんだね。「味読」に近いものがあるけれど、より夢中になっている印象を受けるね。
耽溺という言葉が浮かんだわ。まさに耽る状態ね。
遅読
遅読とは
遅読とは何か、まずは辞書の定義を見てみましょう。
(本を)じっくりと時間をかけて読むこと。(デジタル大辞泉)
遅読というのは、じっくりと時間をかけて読むことなんだね。速読とは反対の意味だね。
速く読むことが重要だとされる一方、これに反発するようにじっくり時間をかけて読むこと(遅読)の重要性も徐々に浸透してきているのではないでしょうか。
一冊の本にじっくりと時間をかけて読むことという点では、作家・平野啓一郎が奨める「スロー・リーディング」も遅読の一種と考えていいでしょう。
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多読とは
多読とは何か、まずは辞書の定義を見てみましょう。
・本をたくさん読むこと。(大辞林第三版)
・本をたくさん読むこと。(デジタル大辞泉)
・本をたくさん読むこと。いろいろな本を多く読むこと。(精選版 日本国語大辞典)
とにかくいろいろな本をたくさん読むことが、多読なんだね。
いったい何冊読めば、多読と呼べるのかな?
一概にはいえないけど、毎日一冊、年間で365冊以上読めば多読といってもいいだろうね。ただし多読といっても、すべての本を始めから終わりまで熟読しているとは限らないよね。
多くの本に目を通したとしても、隅から隅まで読んでいるとは限りません。
では、多読の目的とは何でしょうか。さまざまな情報があふれている昨今、自分にとって必要な情報を得る間口を広く構えることも情報を得る上で重要なポイントです。この方法・ポイントのひとつとして、多読が位置付けられるのではないでしょうか。
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乱読・濫読
乱読・濫読とは
乱読・濫読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・種々の書物を系統立てずに手当たり次第に読むこと。(大辞林第三版)
・いろいろな本を手当たりしだいに読むこと。(デジタル大辞泉)
・むやみやたらに読むこと。いろいろな書物を手当たり次第に読むこと。(精選版 日本国語大辞典)
いろいろな本を手当たり次第に読むことが乱読(濫読)なんだね。
一冊の本を読むだけでは、乱読にならないということね。
また「手当たり次第」というところから、あまりいいイメージで使われない場合もあるけど、メリットもあるよ。
では、乱読のメリットとは何でしょうか。
- さまざまな系統の本を読むことから、物事を多角的に捉えることができる
- すべての本を最初から最後まで読む必要はなく、自分が読みたいと思った本や読みたいと思った部分だけを読んでよいので、本を読み切らなければという強迫観念から解放される
- 本の内容を比較することができるので、本の主張を鵜呑みにせず、客観的に判断して情報を習得できる
- 多くの本に触れることができるので、本を選ぶ目が養われる
一冊の本を最初から最後まで読んで次の本に移るという場合と比較して、上のような点が乱読のメリットといえそうです。
複数の本を同時に読む、さらにさまざまな系統の本を読むことがポイントになるね。
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黙読とは
黙読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・声を出さずに読むこと。(大辞林第三版)
・声に出さずに読むこと。(デジタル大辞泉)
・声に出さないで、目だけで読むこと。目読。(精選版 日本国語大辞典)
黙読とは、声を出さずに読むことだね。
一般的に本を読む場合、声に出さずに読むことが多いわね。学校の授業などでは声に出すこともあるけど…。
電車やバス、図書館、喫茶店などで本を読む場合、普通は黙読だよね。一人で読むときやまわりに人がいるときの読み方だね。
音読
音読とは
音読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・文章を声を出して読むこと。朗読。(Wikipedia)
・声を出して読むこと。(大辞林第三版)
・声を出して文章を読むこと。(デジタル大辞泉)
・文章などを声を出して読むこと。朗読。(精選版 日本国語大辞典)
音読は、声を出して文章を読むことなんだね。黙読の正反対だね。
朗読とほぼ同義としている辞書もあるわね。
声を出さない黙読に対して、声を出して読むのが音読。学校の国語の授業などでも取り入れられているね。
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朗読
朗読とは
朗読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・「音読」ともいうが、「朗読」には「感情をこめて読み上げる」という意味あいも含まれる。また、朗読を芸術的な観点から「文字言語で表現された文学作品を音声言語で再表現する芸術」ととらえる考え方、あるいは、学問・教育的な観点から「自分の読みを獲得し、それを他者に朗(あきら)かにする行為」ととらえる考え方もある。(Wikipedia)
・声を出して詩・文章などを読むこと。(大辞林第三版)
・声に出して読み上げること。特に、詩歌や文章などをその内容をくみとり、感情をこめて読み上げること。(デジタル大辞泉)
・声高く読みあげること。特に、文章や詩歌の思想・感情をくみとり、発音正しく趣のあるように読みあげること。郎誦。(精選版 日本国語大辞典)
朗読は、特に詩歌や文章などをその内容や感情をくみとり、感情をこめて声に出して読み上げることなんだね。
音読も声に出して読み上げることだったけど、「感情をこめて」の部分が大切なのね。感情をこめると「音読」から「朗読」になるといってもいいかもしれないね。
特に詩歌などを読むときは感情をこめるから、音読というよりも朗読と呼ぶのが適切なのね。
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素読とは
素読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・意味を考えないで、文字だけを声を出して読むこと。そよみ。すよみ。(大辞林第三版)
・書物、特に漢文で、内容の理解は二の次にして、文字だけを声に出して読むこと。すよみ。(デジタル大辞泉)
・書物の意味・内容を考えないで、ただ機械的に文字を音読すること。そどく。(精選版 日本国語大辞典)
素読とは、意味や内容を考えないで、機械的に文字だけを声に出して読むことなんだね。
もう少し事典の記述を詳しく見てみましょう。『世界大百科事典 第2版』には次のように書かれています。
古典の原文を幾度となく繰り返して読み,それを書物を用いないで誤りなく言うことができるようになる学習法の一つ。日本でこの方法がひろく行われて学習の初歩として普及したのは江戸時代においてである。とくに武家の子弟が漢学の初歩としてこの方法をとったのであって,武家の学校や漢学塾での学習の初めは漢籍の素読であった。それでこれらの教育機関では初歩の生徒のために素読席が設けられ,素読の個人教授を担当する教師がいた。(世界大百科事典 第2版)
また『日本大百科全書(ニッポニカ)』には次のように書かれています。
漢文学習の一方法。漢文学習法には、文字の順序に従って音読みする直読と、日本語に読み下す訓読とがあり、素読はこの訓読の一法であるが、その意味や内容は二の次とし、訓読口調に熟達して、文章を暗唱するように読むものである。
素読は中世以来盛んになった方法で、とくに江戸時代には漢文を学習する幼若の初学者の間で盛行した。寺子屋などで教材として多く用いられたのは、『論語』『孟子(もうし)』『大学』『中庸』のいわゆる四書で、これらの教材の意味、内容を深く考えることなく、ただ口調のおもしろさに応じて暗唱し、読了する。記憶力の旺盛(おうせい)な幼若初学者には、漢文口調のおもしろさは格別で、それにつられての熟達も速く、素読はそれなりの効果があったが、明治以後の漢文学習には、そののんびりとした性格から、すっかり廃れた。「読書百遍、意自(おのずか)ら通ず」というのはこの漢文素読法の賞揚に通じる。(日本大百科全書ニッポニカ)
古典、特に漢文において意味は二の次にして、とにかく繰り返し声に出して読むことが強調された時期がかつてあったんだね。
意味よりも音から入ることで得られるものがあるということね。
素読に関する書籍
通読
通読とは
通読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・全体を一通り読むこと。初めから終わりまで読み通すこと。(大辞林第三版)
・始めから終わりまで読み通すこと。また、ひととおり目を通すこと。(デジタル大辞泉)
・ひととおり読むこと。始めから終わりまで読み通すこと。(精選版 日本国語大辞典)
通読とは、始めから終わりまで一通り読み通すことなんだね。
内容をじっくり吟味することよりも、とにかく読み通すことが第一目標なのね。
輪読
輪読とは
輪読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・数人が一冊の本をかわるがわる読んで解釈し意見を交わすこと。(大辞林第三版)
・数人が一つの本を順番に読んで解釈をし、問題点について論じ合ったりすること。(デジタル大辞泉)
・数人が集まって一つの著作・作品を読むこと。共同で解釈研究などをする時に行なう。(精選版 日本国語大辞典)
輪読とは、複数人が一冊の本を交代で読み進め、解釈を行ったり意見を論じ合ったりする読み方なんだね。
論じ合うってことは、みんなで集まって行うのかな?
そうだね。主に「輪読会」という場で行われることが多いみたいだね。
輪読会の意味を見ておきましょう。
人々が集まって、同じ教科書などの本を読み、その内容について意見を交わすことを意味する語。事前に決められた担当者が、本の内容を訳したりまとめたりしてから、他の参加者が理解できるように発表する形式がとられることも多い。(実用日本語表現辞典)
一人で読むのではなく、複数人で読む輪読の目的は何なのかな?
輪読の目的はさまざまあるが、主要なものは次の通りでしょう。
- 議論することから、自分一人では気づかない視点や問題点を知ることができる
- 意見を発表するため、アウトプットの練習になり、知識が定着する
- 自分で選ばないような本と出合うことができる(ただし輪読会の運営方法に依存する)
- さまざまな職種や立場の異なる人と出合うことができる(ただし輪読会の運営方法に依存する)
一人では気づくことができない観点を得ることはとても大きなことね。
査読
査読とは
査読とは何か、まずは辞書の定義を見てみましょう。
・研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のことである。研究者が学術雑誌に投稿した論文が掲載される前に行われる。研究助成団体に研究費を申請する際のそれも指すことがある。審査(しんさ、refereeing)とも呼ばれることがある。(Wikipedia)
・水準に達しているかどうかを審査するために読むこと。(大辞林第三版)
・学術誌に投稿された学術論文を専門家が読み、その内容を査定すること。(デジタル大辞泉)
ある研究者が投稿した学術論文を研究者仲間や専門家が読み、その内容を評価・査定することが査読なんだね。
査読は読書術というよりも、検証するために読むことそのものといえるね。
査読に関する書籍
視読
視読とは
視読とは何か、まずは定義を見てみましょう。
「文章をかたまりで瞬間的に視野に入れ同時に内容を理解する」読み方(一般社団法人日本速脳速読協会)
視読は、速読における技術のひとつで「ブロック読み」ともいわれます。文章をかたまりで捉えることで、読むスピードを上げる方法です。
かたまりで捉えるといっても難しそうね。
ただ日常生活の中で実践している場合もあるんだよ。例えば友達の名前や知っている地名など、見てすぐに内容を理解している状況だね。これが視読といえるんだね。
一文字一文字読むんじゃなくて、複数文字を同時に目に入れて把握するってことね。
誤読
誤読とは
誤読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・まちがって読むこと。読みあやまること。(大辞林第三版)
・誤って読むこと。読み誤り。(デジタル大辞泉)
・①漢字などの音や読みを誤ること。②著作物などで、著作者の意図を誤解すること。(Wiktionary)
誤読とは大きく2種類あって、ひとつは漢字の音や読みを間違うこと。もうひとつは内容や意図を読み誤ることなんだね。
誤読は読書法ではなく、本を結果的に誤って読んだ行為そのものを指すのね。
積読
積読とは
積読とは何か、辞書の定義を見てみましょう。
・入手した書籍を読むことなく自宅で積んだままにしている状態を意味する用語である。(Wikipedia)
・《積んでおく意に読書の「どく」をかけたしゃれ》書物を買っても積み重ねておくだけで、少しも読まないこと。(デジタル大辞泉)
・(「積んでおく」の意に「読書」の「どく」を掛けたしゃれ) 書物を買ったまま読まないでただ積んでおくこと。(精選版 日本国語大辞典)
・本を購入し、「いつか読もう」と思ってはいるものの、まだ読まずに放置してある(積んである)状態、あるいはその本を意味する語。(実用日本語表現辞典)
購入した本のうち、何冊かは読まないまま机などに積んだままの状態になっていく本があります。これらの読まないままの本を積んでいる状態を積読といいます。「読書」という語を掛けて表した洒落言葉が「積読」なのです。
さらに、はてなブログタグで「積読」を見てみると次のように書かれています。
買っても机の上などに積んでいるだけで読んでいない本・新聞・雑誌等のこと。積ん読とも表記。読書家なら必ず持っているもの。本は腐らないから出会いは一期一会だから今読まなくても、ぜったい読むからなどと自分に言い訳する頃には、数百冊単位の積読を抱えている場合が多い。
積読は、積んだままにしていて読まない本のこと、あるいはその状態をいうんだね。
「読書家なら必ず持っているもの」という表現がおもしろいわね。読まないまま放っておくことだけど、積読は悪いことではないのかしら?
積読は排除すべきものなのでしょうか。
そもそも読まないままにしておくのであれば、なぜその本を購入したのだろうということになります。しかし、やはり本というのは読みたい本が次から次に出版されていますから、どうしても優先順位が下がってくる本というのはあるでしょう。読む優先順位が下がってきた本が、積読の対象になっていくのではないでしょうか。
さらに本との出合いは一期一会といえます。買いたいと思ったときに買わないと、もうその本を手に入れる瞬間は二度と訪れないかもしれません。とりあえず買っておいて後で読もうという場合も、積読になるケースが多いといえるでしょう。
積読はマイナスのイメージが少なからずあるかもしれませんが、積読された本を眺めることは楽しいことでもあります。「まだこれだけ読んでいない本がある」と思うのではなく、「まだこれだけ読みたい本がある」と思えば、積読状態はむしろプラスで楽しい状態であるといえるかもしれません。
積読はマイナス面よりも、プラス面として捉えた方がいいようだね。
積読のまとめ
積読をまとめると、次のようになります。
- 積読とは、購入した本を読まないまま積んでおくこと、あるいはその状態の本のことである。
- 積読は読書家の証でもある。
- 読みたい本の優先順位、また本との出合い・購入が積読になるかどうかに関係している。
- 積読は楽しい状態である。
積読に関する書籍
まとめ:おすすめ読書術・読書法 21選! 精読・通読・乱読・濫読等の違いについて
さまざまな読書法・読書術の違いを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
「○○読」と呼ばれるものは数多くあります。それぞれの方法の定義はその用語を使用する人によって意味や範囲が異なる場合もありますが、主に辞書の意味合いを中心に見てきました。
冒頭で上げた関連イメージ図をもう一度掲載しておきます。
読書法はケースバイケースで変わってきます。ビジネスで求められる場合、プライベートで純粋に楽しむ場合では読み方も自ずと変わってくるでしょう。速さが優先なのか、内容の詳細な把握が優先なのかでも方法は大きく違います。
読書法・読書術の違いを把握して、それぞれの場面に合った読み方ができると読書の時間がより充実したものになるでしょう。
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