『言葉のゆくえ ― 俳句短歌の招待席』坪内稔典 / 永田和宏

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俳句と短歌、言葉の交差点。

俳句も短歌も大きな分類においては短詩型文学という括りに入ります。しかし、俳句と短歌の違いは何ですかと問われたら、いったいどう答えればよいでしょうか? 字数が違う、季語があるのとないなどはもちろん答えとしては正しいのですが、何かこうもっと本質的な部分における違いがあるのではないでしょうか。本書は、俳人である坪内稔典と歌人である永田和宏による共著です。「光」「夢」「鬼」「笑い」などといったひとつのキーワードに対して、それぞれが他の俳人や歌人の戦後の俳句・短歌を取り上げ解説していきます。そして彼ら自身の作品も互いに選び掲載されています。例えば「光」の章において、取り上げられている作品を抜粋します。

夜の葱にほのか彗星光ありぬ (仁藤さくら『光の伽藍』)
くさむらへ草の影射す日のひかりとほからず死はすべてとならむ (小野茂樹『黄金記憶』)
半島の春の仏の黒光り (坪内稔典『高三郎と出会った日』)
透明な秋のひかりにそよぎいしダンドボロギク だんどぼろぎく (永田和宏『華氏』)

「光」というキーワードひとつからでもさまざまな俳句や短歌が連想できることがわかります。鑑賞は読み手の自由になされていいわけですが、本書には著者二人の鑑賞が書かれており、句や歌を読む補助線を与えてくれるのです。最後の永田和宏の一首について見てみると、やはり「だんどぼろぎく」という韻律が決め手なのだと思います。カタカナ表記とひらかな表記も効果的であり、透明な秋のひかりのなかに「だんどぼろぎく」の存在感が浮かび上がります。本書には二人の対談も収録され、俳句と短歌の違いや読者に対する意識など、非常に興味深い内容となっています。

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