どこで働くか、誰と働くか、いつ働くか、どう働くか。それらはすべてあなた自身が決めればいい。
「なぜあなたは今の仕事を選んだのですか?」
この問にはっきりとした回答をもっている人は、その仕事が天職なのかもしれません。しかし組織に属しながら働く多くの人々は、日々何かしら悩みながら働いているのではないでしょうか。今の仕事、今の職場が最適なのか、自分に合う仕事や職場が別のところにあるのではないか、そのような疑問を抱えている人は私ばかりではないでしょう。
本書はタイトルにもある通り、天職・転職・就活・キャリアについて、著者自身の経験を交えながら論じた一冊です。かつての日本では終身雇用が当然のように考えられていたこともありましたが、現在転職の持つイメージは変わってきています。入職前の新人が最初に入った組織にずっと居続けなければならないということはありません。著者はレストランの例を引いて次のように述べています。
例えば、最初に入ったレストランに一生通い続けなければならないとしたら、どう思いますか、と。
レストランならすぐに変更すればいいのですが、これが会社や組織になると、なぜかわからないけれども、人は一生勤めるのが美徳という考えになってしまうのです。会社や組織は入ってみないとわからないことは多くあり、一発勝負でその後の人生が決まってしまうとなるととても怖ろしい話です。
では、今の会社や組織が合わないと思ったとき、そんなときこそ転職やキャリアを考えるきっかけが訪れます。本書には、次のような視点による考えが展開されています。
- 転職には「攻めの転職」と「逃げの転職」がある
- 「自分が好きなこと」と「自分が憧れていること」を混同していないか?
- 「キャリア」を考えるとき、譲れないものは何か? (キャリア・アンカー)
- 「キャリア」は「いい偶然」によって形成される (計画された偶発性理論=プランド・ハプンスタンス・セオリー)
- 「いい偶然」はどうやって起こすか?
- 「いい偶然」をどうやってキャリアに結びつけるか?
- 自由さを獲得したければ不自由な期間を過ごさなければならない
- 転機というのは単に「何かが始まる」ということではなく、むしろ「何かが終わる」時期
例えばハプンスタンス・セオリーの提唱者クランボルツが指摘した「いい偶然」を引き起こすための要件は、「好奇心」「粘り強さ」「柔軟性」「楽観性」「リスクテーク」ということです。現在の仕事が大変でつらくて面白くなくても、その中でも好奇心なり粘り強さなりを求めることが、将来的な「いい偶然」につながっていくのでしょう。
本書には、さまざまな本や文献を引き合いに出した論の展開のみならず、著名人の名言そのものもところどころに掲載されています。
「何々になろう」とする者は多いが、「何々をしよう」とする者は少ない。 (長岡半太郎)
人間が幸福であるために避けることのできないもの。それは勤労である。 (レフ・トルストイ)
転職をするべきかどうか悩んだときに、まずこの一冊を読めば自分自身の考えが整理されると思います。