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一度しかない人生に、ひたすらに短歌が貼りついてくる。
短歌を読む喜びはどこにあるのでしょう。
そのひとつは自分の認識の範囲外から新たな認識がもたらされる瞬間に出合えることでしょう。
著者は第54回角川短歌賞を受賞した歌人で、その作品には理と情が何ともいえないバランスで混じり合い、独特の歌世界を展開しています。三十一音に収めることのできる言葉の数は限られていますが、そこから広がる世界は限りがありません。
人を待つ吾はめぐりの街灯に暗き展開図を描かれて
六面のうち三面を吾にみせバスは過ぎたり粉雪のなか
ドアに鍵強くさしこむこの深さ人ならば死に至るふかさか
雷龍の国にてしのぐ霧雨の、此の人生が一度しかない