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何色でもない言葉、しいていうなら風の色に近い言葉。
26歳の若さで亡くなった歌人・笹井宏之の第三歌集。
「透明感」という言葉で語られることの多い笹井ですが、本歌集の傾向は少し異なります。
それは新聞投稿歌を中心にまとめられているからです。とはいうものの、彼本来の持ち味である詩的な強さは読み手の胸にぐっと迫ってきます。
進んでいるのだと思っていたけれどほんとは車窓のシネマだった
玄関は人を吐き出し閑雅なるひかりひととき育てておりぬ
雨といふごくやはらかき弾丸がわが心象を貫きにけり
白鳥座より抜け出でし白鳥のいたくしづかな着水を見つ