五重塔といえば、五階建てだと思いますよね。でも実は違うんです。
中はなんと「吹き抜け」になっています。
いわば一階建ての高い吹き抜けということになります。
つまり「五重塔は一階建ての高い吹き抜け。したがって五階建てではなく一階建て」。
これが答えです。
でもこれだけで終わってはもったいないので、五重塔の構造をもう少し見ていきたいと思います。
日本を代表する京都・東寺の五重塔と、奈良・法隆寺の五重塔を例に構造と特徴を見ていきたいと思います。
東寺・五重塔の内部構造
![東寺・五重塔](https://obibun.com/wp-content/uploads/2022/01/touji.jpg)
京都のシンボルである東寺の五重塔は、平安時代に建てられ始めました。
五重塔は弘法大師・空海によって建てられたと言われています。
しかしその後4回焼失し、現在の五重塔は江戸時代前期に建てられた五代目となります。
東寺の五重塔は、現存する木造建築物としては日本一の高さです。
その高さは、54.8m。東京ドームの高さが56.19mなので、ほぼ同じくらいですね。
冒頭で、五重塔は一階建てとお話しました。
五重塔の中心には、その一階から上へ向かって伸びる柱があります。
この柱は「心柱」と呼ばれています。
「心柱」は他国ではあまり見られない、日本特有のものなんですね。
そして心柱を囲むように仏像が置かれています。
十二体ある仏像が「東・西・南・北」に配置され、 柱にも装飾がされています。
そもそも五重塔はどんな目的でつくられた?
五重塔は正式には「仏塔」といいます。
仏塔つまり「お釈迦様のお墓」ですね。
一般のお墓(墳墓)のようなものでは、
お釈迦様の偉大さが伝わらない、同じにするべきではないと弟子たちが考えて
「仏塔」になったといわれています。
お釈迦様のお墓なので、仏像が配置されているのですね。
日本の仏塔は、中国の仏塔とは少し違います。
中国の仏塔には内部に階段があるものもあるのですが、
日本の仏塔は人が中に入ってなにかする目的はなく、
仏舎利(お釈迦様のお骨)を納める神聖な場所となっています。
五重塔は外から見た時に、屋根が五層になっていますよね。
これにもきちんと意味があります。
五層の下から順に、
地(基礎)・水(塔身)・火(笠)・風(請花)・空(宝珠)と言い、
仏教的な宇宙観を表しています。
ちなみに、お墓で見かける「卒塔婆」も同じ意味があります。
卒塔婆の上の方のギザギザが、五層と同じとされているのです。
飾りだと思っていましたが、きちんとした意味があるのに驚きました。
法隆寺・五重塔の内部構造
![法隆寺・五重塔](https://obibun.com/wp-content/uploads/2022/01/ce3ec542357b204b672ea6e5daf7a3db.jpg)
先ほどお話した「心柱」を含めた五重塔の建物そのものについて、
奈良・法隆寺を例にとり見ていきたいと思います。
法隆寺の五重塔は1300年以上前・飛鳥時代に建てられました。
日本最古の五重塔であり、木造五重塔としては世界最古の建物です。
法隆寺は聖徳太子が建立しました。
五重塔をはじめ、これだけの木造建築物が飛鳥時代につくられたことに改めて驚きます。
法隆寺の高さは32.45mで、高さランキングでは9位になります。
高さは9位ですが、その凛とした美しさは群を抜いています!
地震の揺れを逃がす耐震構造
飛鳥時代からの現在までの間、
数多くの地震にあってきたにもかかわらず、法隆寺の五重塔は倒れることがありませんでした。
それは地震の揺れをうまく減らす構造があったからです。
その技法や技術は現在に引き継がれ、
なんとあの「東京スカイツリー」にも活かされているのです。
東寺の五重塔と同じように、法隆寺の五重塔の中心にも「心柱」があります。
法隆寺の五重塔の心柱は約30mありますが、
これは八角形の二本の木材がつながれたものです。
当時は、30mの太くまっすぐな原木が用意できなかったのかもしれませんね。
ひさしの部分を含む各層を支えているのは、
中央の心柱の周りに4本ある四天柱と12本の側柱になります。
地震が来ても各屋根(ひさし)がゆらゆら揺れて、振動を弱めてくれるのです。
揺れを逃がすいわゆる耐震構造です。
「積み上げ構造」とよばれる、法隆寺の五重塔の手法こそが、
東京スカイツリーに採用されているのです。
五重塔が上に行くほど細くなっているのに、気がつかれたことはあるでしょうか?
屋根の大きさが、
下層部から上層部に向かって絶妙な比率で小さくなっています。
そこでもバランスを保っているのですね。
![五重塔・相輪](https://obibun.com/wp-content/uploads/2022/01/sourin.jpg)
また、五重塔のてっぺんにある金属の飾りを「相輪」と呼びます。
「相輪」は重さ3トンもありますが、
この相輪を建物全体の上にかぶせることでバランスをとっています。
中心にある心柱はバネとしての役割であり、
建物自体の重さを支えているわけではありません。
相輪を含めた全体の構造が重さを分散させて、
倒れにくい建物になっているのですね。
改めて、1300年も前の職人さんたちが考えた手法に驚かされます。
まとめ:五重塔は一階建ての吹き抜け
五重塔の構造や、つくられた目的をここまで見てきました。
五重塔は「お釈迦様のお墓」になるので、
建物の美しさを眺めるだけでなくお参りも忘れずにしていきたいですね。
五重塔があるお寺に行くことがあったら、ぜひ周りの人にも教えて一緒にお参りしてくださいね。
それでは、ここまでをまとめておきます。
五重塔のまとめ
- 五重塔は一階建ての吹き抜けでできている
- 五重塔の内部には、日本特有の「心柱」がある
- 心柱と絶妙なバランスが地震などによる揺れを逃がしてきた
- 五重塔はお釈迦様のお墓。その為一階部分は仏像が配置されている
また京都・東寺では、 普段入れない五重塔の初層に入る事ができる『特別拝観』が行われます。
特別拝観の時期は次の通りです。
- 冬(1月初旬~3月中旬)
- 春(4月下旬~5月下旬)
- 秋(10月下旬~12月上旬)
日本の素晴らしい建築と歴史を感じるために、訪れてみてはいかがでしょうか。
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