読書に没頭できる時間があること。それは人にとっても、本にとっても幸せなこと。
本書の表紙には「人は、読書する生き物である」という言葉が書かれています。本を読む習慣のある人にとって、読書の時間とは何ともいえない至福の時間であることでしょう。本書は、本とは何か、読書とは何かに焦点を当てた一冊です。
大切なのは、なによりもまず、本は「本という考え方」を表すものであるということ。本についてのいちばん重要なことは、本は「本という考え方」をつくってきたものであるということ。
「はじめに」
著者の、本に対する考え方が示されている文章です。本を読むという行為は、ただ単に内容や考えを検索し要約するようなものではないと述べています。本というひとつの世界のつくり方を学ぶもの、それが本だというのです。
「読む本」「読むべき本」が、本のぜんぶなのではありません。本の大事なありようのもう一つは、じつは「読まない本」の大切さです。図書館が、一人一人にとっては、すべて読むことなど初めから不可能な条件のうえにたってつくられるように、「本の文化」を深くしてきたものは、読まない本をどれだけもっているかということです。
「本の文化」について触れた記述です。集合体のしての本、未来に向けられた考え方など、目先や近距離の本の世界だけではなく、もっと広い視点、先への視点が、本の文化をつくりあげてきたと述べています。読まない本をどれだけもっているかが、本の豊かさにつながるのでしょう。
本書の構成は8章から成ります。
1 本はもう一人の友人
2 読書のための椅子
3 言葉を結ぶもの
4 子どもの本のちから
5 共通の大切な記憶
6 今、求められること
7 読書する生き物
8 失いたくない言葉
どの章からも、読書に対する著者の信頼の大きさや、本に対する愛情を感じます。
人をして人たらしめてきたのは、そう言い切ってかまわなければ、つねに読書でした。
「あとがき」
ふだん本にあまり接していない人は本書をきっかけに読書への興味が大きくなると思いますし、ふだんから読書が趣味の人は改めて読書について考えさせられる本となっています。忙しい日々に追われて読書をする時間がないときにこそ、ページを開けたい一冊だと思います。