『ひとは情熱がなければ生きていけない』浅田次郎

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情熱を補充してみませんか?

この本のタイトルを見たときに、「情熱をもって生きているのだろうか?」と自分に思わず問いかけてしまいます。「情熱」の熱量は人によってさまざまだとは思いますが、生きていく上で、少なからず「情熱」と呼ぶべきものが必要なのだと感じている人が多いのではないでしょうか。

本書は大きく5章から成ります。

・ひとは何に生きがいを見つけるか 〈天職への情熱〉
・ひとはどう自分流をつくるのか 〈創造への情熱〉
・ひとは育ちから何を学ぶか 〈生活美学の情熱〉
・ひとはどんな”自分”でいたいか 〈こだわりの情熱〉
・ひとはどこで日常からリセットするのか 〈遊びの情熱〉

著者はあらゆる角度から情熱というものを捉えています。生きていく上で仕事は避けて通ることのできない最大のもののひとつで、人生の多くの時間を占める仕事は、ある面においては生きがいとほとんど同義であるともいえるでしょう。「天職への情熱」の章は、論語や三島由紀夫をテーマとした文章であり、著者の小説家としての原点や考え方が述べられています。

続く「創造への情熱」では次のような文に出合います。

私が人よりたくさん持っているものは、背広と書物である。
実にわかりやすい。この一行でキャラクターが知れてしまう。 (「背広と書物」)

私はどうしようもない道楽者である。だが、俗にいう「飲む、打つ、買う」はあたらない。私の三拍子は「読む、打つ、書く」で、子供の時分からそればかりで生きてきた。 (「袖闇そでやみ」)

著者が非常に身近に感じられるような文章です。ここから「自分流」ということが素直に窺えるのではないでしょうか。「自分」というものが何か、自分の特徴とは何か、それが他者にはっきりと示すことができるということは、すなわち「自分流」ができているということなのです。

他にも、生活、こだわり、遊びとそれぞれに対して著者の経験や考えが提示されています。また「後輩諸君!〈私の人生観〉」と「男の本領について〈私の自衛隊経験〉」と題する講演も収録されており、こちらも興味深い内容となっています。

誰かの人生や考え方の一端に触れることは、自分の人生を見つめなおすいいきっかけになるでしょう。それはたとえ面識のない人物の人生であったとしてもです。一冊の本が、そしてその中のひとつの文章が、あるいはひとつの言葉が、自分の人生に影響を与えることがあるかもしれないのですから。

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