『冬山の掟』新田次郎

当ページのリンクには広告が含まれています。
目次

冬山は夏山とは違う。冬山に人が足を踏み入れること、その行為自体そのものが、実は相当恐ろしいことであるのかもしれない。

¥682 (2022/01/21 04:45時点 | Amazon調べ)

表題作「冬山の掟」の他、「地獄への滑降」「霧の中で灯が揺れた」「遭難者」「遺書」「おかしな遭難」「霧迷い」「蔵王越え」「愛鷹山」「雪崩」の山岳短編十編が収録されています。

新田次郎の『冬山の掟』は、登山ブームの昨今、一歩間違えば山は恐ろしい姿を見せることを改めて感じさせてくれる一冊です。山を舞台とした、山を愛するが故に下される個々人の判断はどこか正しくどこか危うさをまとっています。山と人は切っても切れない関係にあると思います。

本書は、日本の冬山登山の過酷さと、その中で繰り広げられる人間ドラマを描いた作品です。物語は、冬山での遭難事件を中心に展開し、登山者たちが直面する自然の厳しさや人間関係の葛藤を詳細に描いています。

物語の舞台は日本アルプス。冬山は登山者にとって非常に危険な場所であり、常に命の危険と隣り合わせです。雪崩や猛吹雪、凍傷といった具体的なリスクを描くことで、読者に冬山の恐ろしさをリアルに伝えています。登山者たちは、自然の前では無力であり、その中で生き抜くための知恵や技術が試されます。

主人公は、経験豊富なベテラン登山家と、初心者の若い登山者たちです。彼らはそれぞれの理由で冬山に挑みますが、やがて自然の厳しさに直面し、極限状況の中で生きるための戦いを繰り広げます。登山者たちの間には、経験や価値観の違いから生じる対立や協力があり、彼らの人間関係が物語の重要な要素となっています。

ベテラン登山家は、若い登山者たちに対して冬山での生き方や掟を教えます。この「掟」は単なる規則ではなく、命を守るための知恵と心得です。具体的には、体力の温存、適切な装備の選択、チームワークの重要性などが挙げられます。これらの教えは、若い登山者たちが過酷な状況を乗り越えるための重要な指針となります。

展開の詳細な記述は避けますが、登山者たちがどれほど困難な状況に置かれても、仲間との絆や自らの信念を失わない姿を通じて、人間の強さと美しさを浮き彫りにしています。

『冬山の掟』は登山・遭難をテーマにした一冊ですが、単なる冒険小説やサバイバルストーリーにとどまらず、人間の内面や社会の縮図を描いた深い作品です。登山者たちの間に生まれる信頼や友情、時に対立する価値観や信念が、物語を豊かにし、読者に強い印象を残します。緻密な描写と緊張感あふれるストーリーテリングによって、読者はまるで自分自身が冬山にいるかのような臨場感を味わうことができます。

本書は、冬山の過酷さとそこに生きる人々の姿を通して、人間の本質や生きることの意味について深く考えさせられる作品です。登山者たちの生き様や彼らが直面する試練を通じて、読者は自然の偉大さと人間の小ささ、そしてその中で輝く人間の強さを感じ取ることができるでしょう。

『冬山の掟』は、登山愛好者だけでなく、登山をしたことがない読者にも訴えかける力を持つ一冊です。

¥682 (2022/01/21 04:45時点 | Amazon調べ)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次