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生きるということは、問いかけつづけることではない。問いかけられて初めて見えてくる人生があるはずだ。
著者のフランクル(Victor E. Frankl)は、第二次世界大戦下、ナチスにより強制収容所に送られた経験を持つ精神科医です。彼は家族の多くを失いますが、1945年にアメリカ軍により解放されました。彼の過酷な実体験から紡ぎだされる考えや言葉は、現在のわれわれの胸にも響いてきます。
本書は「Ⅰ生きる意味と価値」「Ⅱ病いを超えて」「Ⅲ人生にイエスと言う」の三章から成り、最後に訳者による50ページを超える解説が付されています。
タイトルの「それでも人生にイエスと言う」とは何と素敵な言葉でしょうか。
この言葉は元々強制収容所の囚人たちの間で歌われた歌の一節なのです。いや、素敵という一言で決して片づけられるものではありませんが、強制収容所の壮絶さの中でこの言葉をいえる人たちの、人生に対する向き合い方を考えさせられます。それは著者も同じで、「それでも」の部分に過酷な人生すべてが潜んでいるといっていいでしょう。
生きるとは、問われていること、答えること
―― 自分の人生に責任をもつことである。
人生は人にとっていろいろですが、人はよく「なぜ生きているのか? 生きる意味は何か?」と問います。しかしそうではないのです。
生きるとは、われわれが問うことではなく、人生の方がわれわれに問いかけているのです。そしてそれに答えること、それが人生だと著者はいいます。
生きるということを正面から向き合いたいとき、この一冊はきっと「何か」を投げかけてくれるでしょう。