今回は、アメリカの研究チームによる面白い研究結果を紹介したいと思います。
それは「1枚のピザで健康寿命が5分縮む」という食品に関する研究結果です。
ハンバーガーやステーキなどに代表されるように、アメリカの食事はボリュームの多いイメージがあります。しかしここ数十年では健康的な和食も認められるようになり、寿司屋などの和食レストランも多くなってきました。
健康への意識が高まる中、2021年アメリカのミシガン大学の研究チームが、食生活を少し変えるだけで健康寿命が延び、環境にも優しい生活が得られるという研究結果を報告しました。
ある食品が私たちの健康に影響するというのはわかりますが、同時に環境にも優しいという報告がなされています。健康だけではなく、環境にも影響を与えるとは一体どのようなことなのでしょうか?
そこで今回、私たちの毎日の食生活が健康や環境に及ぼす影響、そして「ピザ一枚で健康寿命が縮む」という調査結果を見ていきたいと思います。
食生活は「健康」だけでなく「環境」にも影響するって知っていますか?
アメリカは多民族国家とも言われ、ベジタリアンやヴィーガンと呼ばれる人が多いことは知られています。
レストランやファストフードでは、漠然とではありますが、自分たちの食事の摂り方によって健康や環境に与える影響を多くの人たちは知っています。
しかし、実際に食すものがどれだけ健康に良い影響を与え、どれだけ環境への悪影響を減らすのか具体的には分かりません。
そこでアメリカの研究チームは、健康と地球のために本当にベジタリアンになる必要があるのか、また抜本的に食生活を見直す必要があるのかについて細かく研究を進めていくことにしました。
この研究のために環境衛生、栄養の専門家がチームを組み、これまでになかった両面からのアプローチをすることにしました。
食品が環境に与える影響の分析方法
健康に与える影響は栄養面から分析すれば分かり得ることですが、環境に与える影響というのはどのように分析するのでしょうか?
それは、原材料の抽出や製造、そして廃棄に至るまですべての段階を見ていき分析する方法が採られました。詳細は分析チームに譲るとして、すべての過程を見ていくことで環境への影響度を図るというアプローチが大変興味深いですね。
では次に、具体的にどのような食品がどれくらいの影響を与えるのかを見ていきましょう。
ピザ1枚が健康と環境に与える影響!
研究チームでは5853種類の食品について、独自で数値の計算を繰り返し「健康栄養指数(Health Nutritional Index、HENI)」というものを作成しました。
そこから環境要因であるオゾン層破壊や輸送中に出される物質など考慮して、それぞれの食品への地球温暖化への影響を算出しました。
つまりこういうことです。
- 健康への影響: その食品を食べることで健康寿命を延ばすか縮めるか
- 環境への影響: その食品を食べることで二酸化炭素の排出は多いか少ないか
この二つの観点から、各食品と健康・環境への影響を数値で示したのが今回の研究成果です。
健康寿命は36分間の損失から33分間の増加まで、地球温暖化への影響は0.005~5.7kg(C02eq:二酸化炭素換算値)まで
大きな幅があることが分かりました。
具体的な食品を挙げると、次のような数値が出されました。
- チェダーチーズひとつで、健康寿命を1.4分間短縮し、0.3kgの二酸化炭素を排出する
- りんご1個で、健康寿命を13分間延ばして、0.02kgの二酸化炭素を排出する
- ピザたった1枚で、健康寿命を5分間短縮して、0.55kgの二酸化炭素を排出する
これら3つの例を見ても、やはり体に良さそうなりんごは健康寿命を延ばし、二酸化炭素排出量は少なく、体にはあまり良くなさそうなピザは健康寿命を短縮し、二酸化炭素排出量も多いことが分かります。
食生活で「増やすべき食品」と「減らすべき食品」はコレ!
研究チームでは、アメリカで人気のある食品を健康と環境の組み合わせに応じて、食生活で増やすべき食品と減らすべき食品群に分けました。
① 食生活で増やすべき食品(健康寿命を延ばし、環境にも優しい食品)
ナッツ類、果物、魚介類、全粒穀物、野菜、豆類など
② 食生活で増やすか減らすか中間にある食品(健康寿命をやや延ばし、環境への影響が中程度の食品)
鶏肉、乳製品、卵を使った食品、米、温室野菜
③ 食生活で減らすべき食品(健康寿命を短縮し、環境にも悪影響を与える食品)
牛肉、豚肉、ラム肉、加工肉など
これらを見ても、食生活で増やすべき食品というのは、健康や美容にもよいと巷でもよく耳にする食品群ですよね。そしてこの食品群は環境にも優しいというのは納得できます。
一方、食生活で減らすべき食品というのは、やはり偏りがあり、摂り過ぎはよくないと聞くものが多いですね。まして環境にも悪影響を及ぼすのであれば、美味しくても出来る限り避けたいですね。
まとめ:一枚のピザが健康と環境に与える悪影響
今回の研究チームの発表により、私たちの毎日の食生活を見直すことにより、健康や環境に大きな変化を与えることが分かりました。
一日の摂取カロリーの約10%を肉類から、全粒穀物や果物、野菜、ナッツ類、豆類などに置き換えるだけで、食事の二酸化炭素排出量を約3分の1減らし、健康寿命を約48時間延ばすことができるのです。
この研究は私たちの食生活において「これを食べたら健康寿命が延びる、これを食べたら健康寿命が縮む」ということを訴えかけているのではありません。
この研究結果を知った上で「健康や地球のために私たちが当たり前のようにしている毎日の食生活を見直してみませんか?」ということだと思います。
ほんの小さな取り組みが私たちの健康や環境に大きな利益を及ぼすのであれば、ぜひ今日からでも試してみたいと思いませんか?